ザ・感想

『ヘッド・ハンター』(徳間文庫)&『復讐の掟』(廣済堂文庫)
  


< The Kansou No.0007 : デュマさん 2002.1.9 >

ヘッド・ハンター

 Sevenさん、おひさしぶりです。
そのほかの方々、はじめまして。デュマと申します。
クラブ・ドミンゴ、以前と変わらず熱い人達でいっぱいですね。
大藪先生の大ファンである私としては嬉しいかぎりです。

 さて私の年末の話です。夕方自宅に帰った頃から急に悪寒に襲われ、体の震えは止まらなわ歯の上下がガチガチ鳴るわで、
そのまま布団に潜り込みました。高熱で意識が朦朧としたまま、数日を過ごした私がようやく平熱に戻り体調も落ち着いたのが、
年の明けた3日の昼頃でした。

 えー、前振りが長くなりましたが今年、初読書した本が実は大藪氏の「ヘッド・ハンター」だったのです(但し、現在129ページ。遅い!)。
私は自分が弱気になっている時、体力が著しく落ちている時に、大藪氏の本ほど私を元気づけてくれるものはありません。
一言一句読むたびに、その一言ひとことが「パワー」となって身体に吸収されていくような気がしますし、実際元気になります。

 普段だと大藪ワールドの主人公と私の共通箇所なんて全く無いのですが、
今回は「ヘッド・ハンター」(2)の冒頭でいきなり高熱と寒気で苦しむ杉田が登場して感情移入できました。
抗生物質を飲んで寝て、汗びっしょりになった冷たさで目を覚まし素っ裸になり厚手のタオルで身体を拭き、悪寒で震えながら下着を取り替え、再び眠る。
一晩に数回これの繰り返しでした。
数日後、平熱近くに戻った時は、杉田ではないですけど運命の神に感謝の祈りを捧げたいほど嬉しかったですね。健康のありがたさをしみじみと感じました。

 平熱に戻ってくると、少しなのですが食欲も湧きます。
「リブ・バーベキューに岩塩と一味唐辛子と胡椒のミックスをハケで塗る」とか「ラム酒をブチ込んだコーヒーを飲む」なんて箇所を読むと、
読んでいるだけで体中が火照りそうな気がしました。

 「ヘッド・ハンター」の主人公杉田は、レコード・クラスの獲物を求め外国のしかも辺境の地に、たったひとりで行く。
数時間、身体を凝固させてじっと獲物を待つ。
ブリザードが吹き荒れると体感温度はマイナス50度ほどにもなる。
仕留めた数百キロの獲物は自分で解体し自分で馬上まで運ぶ。
大小便の匂いが発散しないよう(獲物に感づかれないよう)自分の大小便はビニールに排出し、口を縛る。
夜寝ている時グリズリーの唸り声や狼の吠える声で目を覚ますこともある。

 これらは大藪氏の実体験を下敷きに書かれたと思われますが、作家として地位や名声を得た後も変わらず、
そういう危険で過酷な状況に自らを追い込だ大藪氏の小説だからこそ
(もちろん大藪氏は好きで海外ハンティングをやっていたわけですが、それにしても1回数ヶ月に渡るハンティングの経費は優に数千万はかかるでしょう!)、
氏の小説の中には「力」とか「絵空事とは決して言わせぬ説得力」があるのではないか?などと感じました。

 まさに
大藪春彦の前に大藪春彦なし、大藪春彦の後に大藪春彦なし
あるいは
大藪死すとも、大藪ワールドは死さず
とでもいいましょうか。

 あ、最後に
杉田が高熱と寒気に襲われた主な原因は風邪をひいていたペギーとのディープ・キスでしたが、
私の風邪の原因は職場のエアコンが故障していたためです。念のため。
3,500円の実費を払って予防接種を受けたんですけどあまり効果は無なかったみたいですね(笑)・・・


< The Kansou No.0006 : ビアフラさん 2001.11.24 >

読中感想文

 「ヘッドハンター」 この作品は、「静」→「動」→「静」から成る大藪作品の姿であり、僕の一番好きな作品である。
この作品で、面白いものが作中に登場している。サック、そう、コンドーXです。ウィンチェスターM70の銃身に雪が入るのを防ぐために使われているのである。なるほどと思わせる使われ方だが、撃つときにははずしているのを見ると、余分には持ってきていないのか?
…という詮索は抜きにして、コンドームというには、意外と耐久性がある(黒岩印に限らず)。
以前サバイバルの本で読んだのだが、水を入れても結構な容量が入るので、水袋に使われたり、また数あれば、土嚢を作る際にも使える。
2つ以上の使用目的を考えて常備するのが、サバイバル時の第1条件だそうだが、コンドームをもっていったら、以上の使い方だけでなく、本来の目的に使用するために生きて帰るという生存意欲を刺激させる効果もあるという。まさにオスの本能を呼び覚ます一品である。


< The Kansou No.0005 : MOさん 2001.10.21 >
ヘッド・ハンター

 下の方でTsuneoさんの熱い書き込みがありますが(^。^)
私も徳間文庫「ヘッド・ハンター」購入しました(ついでに廣済堂文庫の「復讐の掟」も)。

 つい1ヶ月ほど前「居酒屋女猫」の方にカキコしましたが、丁度昔の角川版で同作品再読してたばかりで「野獣死すべし」の一節を展開した作品云々という事で・・・。
Tsuneoさんも意見を同じくされるようで、やはりね!(^-^)b と意を強くした次第です。

 徳間文庫も一時期の表紙絵の出来(失礼)とは、打って変わったようなクールな拳銃のトリガーを描いた、大藪ワールドの雰囲気を醸し出すカバー絵で、良かったです。
それと充実した巻末の大藪春彦著作リスト!

 奥付に<編集担当 吉川和利>とクレジットされておりましたが、もしこの吉川さんがここを御覧になっておられたら
「いい仕事をして頂いて、ありがとうございます」という言葉を是非伝えたいですね。(^_^)


< The Kansou No.0004 : Tsuneoさん 2001.10.19 >

私は如何に「ヘッドハンター」という作品を愛するようになったか。

 ほんのわずか逆説的意味を含めて、私は「ヘッドハンター」を作家大藪の最高傑作のひとつに挙げたい。
この作品を読む人は大藪FANでさえ、いや作家自身でさえ主人公杉田を狂気または狂気と正気とのボーダーにいる人物、と評する。
が、私は初めてこの作品に触れたときから今に至るまでそのような感想をもったことは無い。(作品の出来具合にはいいようのない衝撃を覚えたが)

 杉田はあらゆる大藪ヒーローの集大成乃至究極存在ではないのか。

そう感じる理由を以下箇条書きにし、私たちの共通認識・大藪的ヒーローの描写方法と照らしたい。

1.ヒーローは孤独たるべし
2. 〃   は目的遂行の為の手段を選ばない
3. 〃   の使用ツールは、必要たれば作品の流れを止めてでも詳細に説明される
4. 〃   は必要たれば苦痛を無視する
5. 〃   は(必要たらざれば)苦痛に悲鳴をあげるし発熱で朦朧となったりもする
6. 〃   は度し難い程大量のめしを摂取する。それはなかんずく肉類である
7. 〃   は環境破壊的樹木大量伐採も平気で行う。自分の目的に生きる野外人だから
8. 〃   は金にもハングリーだったりする。取り敢えず殺した奴の財布は奪う
  以下略

 ・・・・枚挙に暇がない。つまり「ヘッドハンター」を語ること即ち大藪作品を語ることだから。
わけても、人ひとりがやっと横になれるような洞穴にチューブテントを携えて雌伏するシーンが抜群に良い。
大藪ハードボイルド否須らくハードボイルドの真髄というべき描写と思う。
若かりし邦彦が「毛布とタバコと一握りの塩とライフルを持って曠野を彷徨いたい」と語った時以来かな、みたいな感動がそこにはある。

 こう見ると杉田とは、目的を喪失して(つまり目的を達成してしまって)多分に観念論者的になっていった後期の伊達邦彦よりも
遥かに私たちが期待するヒーロー像に近くはないだろうか。
とはいえ(主題とは少し外れるが)、私は最終的にそんな伊達邦彦の姿を描いた大藪を決して否定はしない。
自分が生み出したヒーローへのオマージュなのだし、その分野で最高の地位を築いたアーチストは最後に何を創っても許されるべきだから。黒澤が「まあだだよ」を撮ったように。

 一方、狩猟・野外生活に特化した小説とも位置付けられること、また前述した大藪フレーバーがあまりにもピュアー過ぎることを以って、
初めての一冊として大藪バージンに教えるに相応しい作品でないことは言っておきたい。
その点が、広く言われる大藪作品の最高峰群である「復讐の弾道」、「ウィンチェスターM70」、「野獣死すべし」、「蘇る金狼」、
「汚れた英雄」・・・(あ、きりがない!)等と比較した場合、やんぬるかな不利ではある。
とりわけ最終節で、ウラニウムカンパニーから自分のトロフィーを奪還だけすりゃいいものを、敢えて核爆発までさせてしまうのは、「もしもし?」と問いかけたくなるくだりだ。

 がしかし、(すいません、今から暴言吐きます)大藪作品に於ける「ケツカッチン」、「筆が滑ってしまった状態」、
「それによるディテールまたはプロットの崩壊」、「ときどき小学生の作文みたいな文章がある」、「何ぼなんでも人、殺しすぎやろ状態」、
「初対面の美女は九分九厘敵の囮」エトセトラを包括して私たちは大藪作品を愛するのではなかろうか。
小説はかくあらなければいけないかくあってはいけないという、スクエアーな考えにゴリゴリ固まったセンセイ方の評価なんぞからは全く軽やかに決別して、
私たちはともかく大藪FANでいるのだ。
今までも、そして巨星堕ちてし以後これからも。


< The Kansou No.0003 : 追放者さん 2001.10.19 >

 遅れましたがようやく当地でも「復讐の掟」を手にする事が出来ました。
そこで、手持ちの資料で確認。雑誌は双葉社発刊の『ニュース特報』で昭和41年10月より連載開始のようです。毎月第2、4水曜日発行。
手持ちの雑誌は42年2月8日号、ナンバー8の「第一歩」でした。62〜67ページ、3部に別れています。
出だしから革ケースにホルスターのルビがふってあったり、参道を〜のところが参道に〜、コードと〜がコードで〜、エール錠は自動錠、縛めは戒めであったりと書き直しのあとがみられました。ちなみに、双葉新書では『縛め』戒めのところだけでした。
当時の大藪氏の手を抜かない一徹な一面を再確認した一時でした。〜伝説には初収載雑誌は載ってなかったと思いますが。あてのない渉猟の一人旅は続いています。では。


< The Kansou No.0002 : こよぴさん 2001.10.6 >
私も今日買いました。

 私も今日やっと徳間版の『ヘッド・ハンター』を手に入れる事が出来ました。何時も古本で買うのですが、巻末のリストと作品自体が大好きなので即決意致しました。
表紙が徳間臭くなくって良い感じですね。ベレッタ92Fのトリッガ−付近のUPですね。

 『ヘッド・ハンター』の感想ですが、初回読んだ時はあまりに自分の中の大薮小説と掛け離れていて、読後は複雑な心境でした。氏はこれから何処に向かうのかと・・・
あまりに常人離れしていると云うか・・・まるで銃と弾丸(ライフル自身に)を主人公自身の体(ライフル)と精神(弾丸)に準えて小説化したと云うか・・・
とにかく主人公自身が意志の有るライフルになってしまったかの様な感じがして射撃のみに喜びを感じる加山雄三の映画『狙撃』にも非常に近い感じがしました。

 それで色々と考えた結果、異論も多数あると思うのですが、個人的には私はこれを現代版『ウインチェスターM70』として読む事にしたのです。
愛銃ウインチェスターM70を用いて、戦う事のみに生の実感(生き甲斐)を感じる登川の精神世界に非常に近い感じがしたのでした。

 氏が若い頃に傾倒したアメリカの古典的ハードボイルド文学の様に内面描写を徹底して割愛し、行動でのみ己の内面を表現して見せる方法論を
改めて取ったかの様に思えます。ですから物語の喜怒が、良い獲物のみを何日も掛けて見つけ、それを捕らえて撮影する行為(喜)のみに向けられ、
その行為を妨害する物(ブラッディーな連中と狩猟行為自体を妨害する病気=風邪)との
戦い(怒)を描く事で主人公の内面に目が向けられていると思ったのです。

 乱暴ですが、それは有る意味、ご自分でご自分の今までの小説の主人公の精神世界を初期の作品の精神の様に『リセット』してしまった様にも感じられるのです。
今まで書かれた作品の中から、ご自分が不必要な物を大胆に削ぎ落とし、ご自分が必要と思っている部分のみを残して作られた作品かと。

 ご本人も仰ってますが、後期以前の集大成が『傭兵たちの挽歌』でそれを書いたが為に一度、ご自分でご自分の作品をリセットして
新たに世界観を再構築して仕切り直した作品の様に感じます。

 それでこの小説は初期の作品群の精神に近いと思う様になり、好きになりました。
後半の氏の作品の始まりがこれだと私は個人的に思っています。

 作品に出ているウインチェスターM70プリ64ですが、近代スポーツ・ライフルの傑作の一つではないでしょうか。
見た事がある方に聞くと、軽くしなやかで操作性も良く、ボルト開閉時のガタもなく、とても生産中止になった昔の銃には思えなかったそうです。
最近のスポーツ・ライフルではレミントン系列のアクションを使ったスポーツ・ライフルが多いのですが、私は最新式のレミントンよりウインチェスターM70プリ64が大好きです。
何処かで良いトイガンが出ないでしょうかね・・・多少高くっても買っちゃいますね。

 


< The Kansou No.0001 : 壬生狼さん 2001.10.5 >
ヘッドハンター

 角川版で読了していましたが、此の作品に流れる空気は一言、「狂気」ですね。
己の狙うトロフィークラスのゲームだけを選別する、セレクティブハンター。ただただ、トロフィーだけに執着し、ゲームライセンスも無視する。
インフルエンザが肺炎に進行しても、野獣の様な体力で耐える杉田。
愛銃のウインチェスターM70プリ64を手に、山を、河を、密猟者すらも下す杉田。
遙かなる荒野を夢想して居た自分は、冷や水を浴びせられた気分でしたね。「自然は、そんな甘い物じゃ無い」と。

 う〜ん、殆ど感想らしい感想に為ってませんね(笑)
ただ一つ、かつては自分もアメリカに渡って銃を手に・・と思って居たので。未だ、トイガンで夢想する日々。
でも、氏の作品を読みながら、トイガンを手にした時、確かに自分は、伊達邦彦で有り、杉田淳で有るんですよね。
なまなかな小説だと、此処まで感情移入は出来ませんもの。
さて、久々に読み返してみるかな?


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