Seven's Review
   【 Review & セリフ集 】   

映画「蘇える金狼」不滅なり

楽しんでってください!!

☆始まりはいつも雨
 大藪春彦原作映画には雨で始まるものが多い。この「金狼」も。
日銀近く。
ビルの時計台の鐘の音でこの映画はスタートする。
そして、タイトルバックの音楽がいい。わくわくするぜ!
旧1万円札を数える女子行員たち。そして、共立銀行現金運搬人たち。今ではこういう人達は見かけないが。
そこへ白バイ登場。 ウッズマン3発で片付ける。ガンマニアの間では有名なカチャカチャ・シーン。
サイレンサーは持ちかえり、わざと銃をおいていくのだ。


☆東和油脂
 雨の中、大きな風呂敷を持ち朝倉出社。 長〜いエスカレーターが印象的だ。
経理部。この会社は上司が後ろの席に座るのだ。ここで働くとしたら、かなりやだな。
だが、朝倉はそういうところで働いてきたのだ。羊の仮面をかぶりながら・・・。

             うちのかみさんがね〜

昼休み。 朝倉は同僚と1億円強奪ニュースの話題に。
朝倉「だけど、つかまんなきゃいいなあ」
「ぼくなんか、あの、大学は夜間だし、この会社入ったのも補欠ぎりぎりだもの」

岩城滉一「あ、補欠ってのは知ってるよ、俺」
朝倉「あ、そうっすか」

奪った金を会社にもってく大胆さ。 しかも本物のりんごまで入れて。
その視線の先には社長令嬢の絵理子が。
   真行寺君枝さん、若い!!

会社帰りにBOXINGジムへ。
「おまえホントに ケ・ツ・ユ・ウ・びょうなのか?」妙なセリフまわしのトレーナーは 角川春樹氏。


☆朝倉の部屋
2階が入口。壁は黒。 ランプをつける。 まずはこの映画で最初の「」だ。
例のお面、ラジオ、スロットマシンが目につく。

   TV金狼の複製はへんだった! 野望を達成すると表情が変わる!

りんごの下には奪ったホット・マネーが。 かつらをとる。
そして、数秒の思案の後、立ちあがる。 ホット・マネーをどうするか?
ここで注目すべきは、朝倉の「決断の速さ」だ。


☆クラブ・ドミンゴにて
バイクで繁華街へ。(横須賀とは明示されず)
チンピラ「どこ行こってんだい、ここは通り抜け出来ねえんだよ!」
朝倉のSWAYBACK&PUNCHは切れがイイ。
「取引の方法は?」とヤクについて問いただす。
チンピラ「クラブ・ドミンゴへいって、カウンターにすわれば、金にかわるといってた」

クラブ・ドミンゴ。 まず目に飛び込んでくるのは黒人ダンサー。
「兄ちゃん、悪いな、一緒に来てもらおうか」と山西道広。ここで朝倉はちゃんと万札を置いてくのだ!

         山西さんは「探偵物語」のあの人!

そして、ドミンゴ別室でのシーン。 すねのワルサーPPKをいつのまにか手に持ち電光石火の反撃。

「こっちこい、どこ行くんだ、こっちこい」 声がいい。
「待ってくれ、あんた、ぜんぶしゃべり終わったら俺をばらす気だろ?」
「そのとおり!」
そしてキメの言葉:「金が欲しいんだよ!」 これ以降のやりとりは優作ならでは。
「わかった、撃つな、撃つな、たのむ、お願いだ、殺さないで」
「だめ、ダメ
「頼むよ」
「女房子供はいるのか?」
「いるいる、い〜っぱいいるんだ
「死んだほうが幸せになれるよ」 「そんなことはねえよ」
ばん!
死体の内ポケットをさぐり、何かをポケットに


☆京子
翌日。 マセラティで小泉の愛人・京子のマンションへ。
成田さん扮する小泉もそうだが、 東和油脂の面々は皆、よく声が透るいい声だ。
成城のゴルフ練習場。 京子のスィングに、一瞬、わき毛が映る。
朝倉、わざとクラブをすっぽ抜けさせる。


場面は一気にヨコハマ、中華街。
朝倉はどう誘ったのか?というシーンを観客に想像させてくれる場面展開が映画の強みだ。
同發新館の個室にて。 ここで2度目の「」・・・キャンドルの炎。 バックのピアノ曲がいい。
お楽しみのシーンはここ。 熊の手のスライスを箸でつまむときの京子の脇毛に注目。

(注:2001年にこの店に食事に行ったが、熊の手のスライスはなかった。)

そして、伝説のHOTEL OZ YOKOHAMAへ。
サンドイッチ、オレンジジュースを補給しながら、後ろから攻める。食欲と性欲を同時に満たす。
「あたし、こんな気持ちになったの初めてだわ、ずーっと一緒にいたいなぁ」
「俺もだ」

        獣のように・・・

長年にわたる調査の末、このホテルの場所を見つけたのは記憶に新しい。


京子のマンションへ。 突然の訪問者・小泉にもあわてない朝倉。

       何だこの匂いは?

衣装部屋に外へ通じるドアがあるとは、無用心だ。


☆「ゆっくりとだぞ〜〜」磯川邸のシーンが大好きなのだ!
その足で市会議員の磯川邸へ。このベントレーは角川文庫の表紙のやつだ。 ショパンのノクターンが流れる。
磯川の声もいい。
「若造、新聞記者などと語りおって、わしに何の用だ?」
「ちんぴらめ、後ろをふり向いてみろ、ゆっくりとだぞ〜」さすが南原さん!

そして、朝倉の名セリフ(原作と読み比べるのもいい)
「あんたんとこの部下は、なりばかりはでかくても銃に関しては全くのトオシローだねえ、
いいかね、この距離からあの種類の銃をぶっぱなせば、弾は完全に俺のからだを貫通して、あんたに当たるんだよ、
それにだ、おれのからだを貫通するときは 弾は炸裂しない。だからまだ助かる見込みはある。
ところがあんたのからだにくいこむときは、弾のつぶれがひどいから、間違いなく即死だな」

磯川「冗談も休み休み言え、そう調子よくわしに当たってたまるかぁ!」

朝倉「無知だねえ、弾ってのはねえ、一番抵抗の少ないところを抜ける性質があるんだ、
俺がからだの向きをちょっと変えるだけで、あんたの心臓めがけて飛ばせることもできるんだよ」

「試してみるか?」 「撃ってみな、撃ってみなよ、おい!」
「銃をおろせ!」 「弾倉を抜け!」 「M70,ボルトはずせ!」「カービン、薬室の弾抜け!」
「ベートーベン!続けるんだよ!!」
ちなみに朝倉はこのとき、前日の東和油脂での安スーツであった。


☆第二海堡での闘い
闘いにそなえ、銃の手入れを ちゃんとする朝倉。パチンコもある。

   動く標的、狙いをつけて

「時間は、今から3時間後、時間厳守だ、よろしく。」3時間後より前に第二海堡へ到着。
注目は取引の場所を朝倉が指定した点だ。当然その地に詳しいのだ。
縦横に走る地下壕を走り回る。 トーチカでの爆発は暴発ということ。

        走るぜ!!

そして、磯川到着。
「動くんじゃない!火かしてやろうか、 合図だったらもっと気のきいた合図考えんだな。おたくんとこの部下は今ごろ昼寝の真っ最中だ残念だったねェ! おい、カトンボ、こっちこい!」
「ぺぺぺぺ、ペーは全部純度の高い本物だ!」
磯川を生かしたまま去る朝倉。


☆もうひとりの狼
「昨日は欠勤いたしまして、申し訳ありませんでした」と小池次長にあやまる朝倉。その後、マキからの電話をとる。
「あ、あの、湯沢さんちょっと僕熱っぽいんで病院行ってきます。あとよろしくおねがいします。」と一人芝居。
東急デパートの屋上で デミフォーンを使用。
桜井(千葉真一)登場。扇子を持ってる。 平凡パンチに金子の浮気写真をはさむ。
「ああ、あなたは誤解しているようだ、 わたしは鈴本光明先生にかわいがっもらってる者なんですよ。」
金子「あ、あ、あ、あの東亜経済研究所所長の鈴本光明先生か?」

(『関根勤のサブミッション映画館』という本で関根氏は「最初強気の小池氏がだんだん弱く、ヘロヘロになり、最後には酸素不足のデメキンのように口をパクパクさせて哀願するシーンはとても印象深く、よく物まねしたものである」と記している。見たかった!!)

金子もしたたかだ。秘密興信所の石井につけさせる。

       帰ってきたウルトラマンでは坂田さん役!!

石井「ギャラァ〜高いよ〜」(岸田森さん!) 目が不自由なふりをして、後をつける。
東亜経済研究所のビルはかなり古いけど丸の内あたりか?
桜井光彦は金狼になりきれなかった青狼か? ネガとテープをトイレに隠す桜井。
東和油脂では緊急重役会議。 社長(佐藤慶)登場!

その後、朝倉は 研究所の女(ノーブラだぜ)を金網を背に後ろから もてあそび桜井の女(マキユキコ)の住所を詰問。
そして、ベランダから朝倉が覗く中、 ユキコの部屋に桜井がやってくる。

「あ〜ああああああああ〜欲望の街」(映画「白昼の死角」のテーマ:欲望の街)

桜井「やってみろよ、やってみろ、その女が死のうが生きようが俺にはいたくもかゆくもねえんだ」
「あなた、助けて」
「助けて?俺をだましてここにおびき寄せておきながら、そんなことが言えた義理か?」

   キック!!

そして・・・ 「ゆきこ、ゆきこ・・・」
「ほんとじゃないわね、ほんとじゃないわね!」
「ばかだなあ、あたりまえじゃないかよぉ」(おいおい!)

それにしても、 桜井のシャツのえり、今からみると、厚すぎだぜ。


☆フラメンコのリズムに乗せて
翌日、廃屋に桜井を追い詰める朝倉。 ブラックジャックの一撃。
昨晩、石井が桜井に渡した2,500万が入ったバッグを奪う朝倉。
そして、フラメンコ・・・この移り変わりとテンポの良さががいい。
新宿のエルフラメンコ。 ここでもテーブルにが…。


☆全部外車だ!
神戸から呼び寄せた2人の殺し屋の一人は、トビーさん。 豊洲の石炭埠頭での外車による桜井VS殺し屋のカー・チェイス・シーン
石井「うらみ、ふかいよ」 壮絶なカーチェイスの末、追い詰められる桜井&ゆきこ
「ここでまってろ!」
                石炭埠頭だ!

そして、 トビーさん「ばかやろ、俺だ、・・・おれだよ〜」
石井、ぼた山すべり落ちながらトドメのSHOOT!

       おしりが痛い!

夜、朝倉は2人の死を確認に現場へ。 ここで朝倉は何を見たのか?
女でつまずいた金狼になれなかった男の行く末か?


☆「朝倉君、君は会社のために・・・」
ひとつの疑問。 目蒲ジムからの電話BY朝倉は関西弁だった。角川氏は関西弁じゃなかったので 金子がジムに確認にいったとき、
「電話なんかしてないよ!?」とならなかったのか?
そして、朝倉の意図通り、東和油脂の刺客に選ばれる。
「報酬は重役のイスだ。」

おいおい!重役と神戸の殺し屋が会ったのも、ホテルOZだぜ。

殺し屋たちの一軒家へ忍び込む朝倉。 ガスバーナーであっさり吐くのは基本だ。
岸田森さんの障子破りエルボーに一発本番に賭けた男の役者魂を見た。
弾の火薬を使って時限発火に使うとはさすがだ。ここでも、ろうそくの

駆けつけた警官「もしもし、もしもし、・・・」
1軒燃やす・・・実際、本物の消防車まで来たそうだ。


☆野望の階段を昇る朝倉
朝倉VS小池IN葉山
「銃ってのはな、セーフテーレバー外さなきゃ弾出ないんだよ!」
「許して〜〜」 小池のうめき「あ、が〜」

社長別荘にて。
「増長するなよ!」というおじサンもいた。「一蓮托生」はこの映画で覚えた。

朝倉名セリフ
「おい、俺がなめられておとなしくひっこんでるようなぼうやに見えたのか?
俺を殺ろうとする前そのことを何度も考え直してみなかったのか?どうなんだー!!」


小泉「悪かった、あやまる、あやまるから、ぼくがわるかった、金子がねー! こいつが、どうしても君をやらせてくれっていうんでそれにのせられたぼくが悪かった」
小池「うそだ〜あたしゃただ命令でいっただけなのに〜」
社長「朝倉君、私はこの件に関しては最初から一切関係がないんだよ」社長の椅子の座り方の変化に注目 。

小泉「きみ7千万っていったら大金だ、サラリーマンにとっちゃきみ、利子だけで一生くらしていけるじゃないか、えっ」
朝倉「あんたイスにすわりなさい!」 「ど〜するんだよ!」→ここで、社長の隣の重役が逆さに吸った煙草を吹き出す。
東和油脂の株、200万株を要求する朝倉。
「よろしい、弾は抜いてありますから、お返ししますよ。
これからは火遊びはほどほどにするんですな。 おい!大株主にコーヒーぐらいもってこんか! ねぇ



東和油脂にて、朝倉名セリフ
「おい、あしたからヒゲそってこい!

            200万株!!

再び葉山の社長邸で末娘の絵理子を紹介されるここでもキャンドルのが。 このとき初めてかつらをとって現れる朝倉。
乾杯。
            炎

絵理子とデート、 そして京子ともデート。


☆カウンタックは赤だぜ!!
朝倉のアジト。
このとき仮面の表情が変わっているのだ! 野望の達成に近づいた金狼。
優作の超絶一人シーン3分46秒。 「あ〜〜〜」 と叫び部屋をかけずりまわるシーン。
ジュピター(木星)の仮面をかぶり、笑う。 このシーンが何かは、見た人それぞれで異なるだろう。

「あ、これはどうも、オートロマンからカウンタックをお届けにあがりました。せんげんでございます。」(村川監督だ)
「鍵!」
「はっ、こちらでございます」
「あの、ご説明を」
「あ、いい いい、帰っていいよ、帰っていいって、帰れよ、おい!」
ランボルギーニ・カウンタックLP500S(BUILT SPECIALLY FOR MR.WALTER WOLF)で
都心を明け方まで乗り回す!! 両手はなし運転!! (この車は現在、某住職の手を離れたらしい)

     すずもと?


☆決断は38秒!!
朝倉VS鈴本。
鈴本「あんたの200万株、売ってくれんか?時価の3倍で買おう。 24億。大金だ。しかし金はどうとでもなる。 わしのバックには次期総裁を狙う、通産大臣の吉村がいる。われわれを敵にまわしてあがくか、それとも、これをしおどきにして金儲けをするか、返事は?」
「あわてるな! (10秒後) 一杯もらおうか」(ここがカッコイイのだ)
ワインを飲み、 「24億、ドルの高額紙幣で用意してもらおう」 決断まで38秒であった。(当時の24億は今だと相当な額だ)


☆ジュブレ・シャンベルタンで乾杯!!
アジト。 ここでもオレンジジュース。 京子が来た。やつれた顔だ。堀田=朝倉とわかった京子。
「女の勘ね」 「あたしはあなたにとって、麻薬で操り情報を手に入れるだけの道具だったのね」
「それは違う」
ジーンズのジッパーを下ろすのが印象的だ。

               狙いはジッパーの中!!

京子とラストデート。
樹海の道(=猿島ロケ)。 どこからともなく聞こえる鐘の音

             下はびちょびちょ!!

この日、京子は朝倉に初めて会ったときの服を着てきた。決意の表れだ。
不意に、京子に刺される朝倉。
血の付いた指をなめる。 ここからは、優作ならではのシーンが展開する・・・。
ナイフを抜こうとする優作の演技は、カメラアングルのためさらに深く刺そうとしているようにも見えるが、やはり抜こうとしたと俺は思う。
一度、京子の息を吹き返そうと胸をさするのが印象的だ。

そして、2枚のうちの1枚の航空券を投げ捨てる。京子のチケットも買っていたのだ!!
この時、絶妙のタイミングで前野曜子のテーマ曲が流れる。♪ 「街はいつしか・・・」
追悼の赤いパラフィンを振りまく。

                    一緒に行きたかったぜ!

人気のない空港。
颯爽と歩く朝倉。 だが、
歩いてる途中で倒れ、そして、数秒後、立ちあがる。このときジャケットの右ポケットからハンカチをとりだしズボンの汚れを払うのだ。
スカンジナビア航空で朝倉は旅立った。 ドルの高額紙幣にしたことからアメリカ行きか?

だが、それは木星行きのフライトだった。朝倉の3列後ろの乗客はアイルトン・セナ激似!
スチュワーデスは遊戯シリーズなどでおなじみの中島ゆたかさん。色っぽいぜ!!

「お客様、どこかお気分でも悪いんですか?何かお飲み物でもお持ちいたしましょうか?」
朝倉「ワイン」
「なにがよろしいですか?」
朝倉「ジュブレ・シャンベルタン。2001年ものだ。ぼくの友人のナポレオンが愛用してたやつ」
「はぁ?」
朝倉「ねぇ、ジュピターには何時につくの?木星には何時につくんだよ、木星には何時につくんだ・・・」

画面が白くなり、 2つの面と共に「終」

 

<Seven's Impression >

大藪春彦原作映画としては、ラストで朝倉が京子に刺されて死ぬなんて決してあってはならない。
20年以上たった今でも俺はそう思う。
そして、松田優作&村川透映画としては、何て魅惑的なラストだろう、と思う自分もいる。
何度見てもそう感じるのだ。
クラブ・ドミンゴのある横須賀のあの辺りも大分変わってしまった。会社乗っ取り自体、今では古いかもしれない。
だが、松田優作が演じた朝倉の「野望」「行動力」は決して色あせることはないだろう。

                         

                                   (ジュヴレ・シャンベルタン2001を飲みながら 2004.1.3 Seven)


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